先日購入したマウントアダプター(シグマではマウントコンバーターと呼んでいる)MC-11と、キヤノンの望遠レンズEF70-300mm F4-5.6 IS II USMを組み合わせてソニーのカメラで動作テストを行ってみました。
MC-11はシグマ製のレンズをソニーのカメラで使うためのマウントアダプターなので、本来であればキヤノンのレンズではなくシグマのキヤノン用レンズを買うべきなのですが、あえてキヤノンのレンズを購入した理由は先日の記事で書いた通りで、EF70-300mm F4-5.6 IS II USMが異常に安かったから。
それに私の場合はソニーのミラーレス以外にもキヤノンの一眼レフの60Dも所有していますから、MC-11とソニーカメラの動作が不調だとしても、最悪60Dで運用すれば良いだけなので、キヤノンのレンズを購入しても無駄にはならないし。
ってなわけで早速テストしてみた結果を書いてみたいと思います。
まぁ結論から言ってしまうとタイトルに書いた通りなんですけど、その理由を細かく。
目次
最初にお断り
MC-11はあくまでもシグマレンズ用のマウントアダプター
冒頭にも書いた通りで、MC-11はキヤノン用のシグマレンズをソニーのカメラに装着するためのアダプターであって、キヤノンのレンズを装着するためのマウントアダプターではありません。
キヤノンのレンズが一応動作するとはいっても、シグマ側からすれば動作保証外だし、動作しようがしまいがシグマには一切非は無いということは最初にお断りしておきます。
シグマからすれば自社のレンズ以外が正常動作しようがしまいが全く関係ないって話なので。
あとAFのテストも行なっていますが、私は普段から連写することすらありませんので、動体撮影のレベルは1.6で四捨五入して2くらいの初心者レベルです。
もしかすると動体撮影に慣れている方がチェックしたら別の感想や結果になる可能性もありますことを予めご理解下さい。
テストに使用したソニーカメラ
- α6500
- α7R III
今回はこの2台で試しています。
動体撮影時のAFなんかもチェックするため、戦闘機や鳥なんかを撮影しに行ったのですが、その時点でのMC-11のソフトウェア(ファームウェア)のバージョンは、
最新の一つ前のバージョンでのテストって形になりました。
と言うのも、MC-11のバージョンが2/21日に上がったことを今日の2/28日まで知らなかったので。
もっとも最新バージョンの1.22は性能のアップデートではなく、レンズ対応のためのアップデートだったようですから、2/21日の最新バージョンでテストしていても結果は同じだと思います。
実際にバージョンアップを行う前に室内でちょっとだけテストしてみた限りでは性能に全く差は感じませんでした。
また、α9と最近発売されたばかりのα6400の2機種に関してはAF性能が別次元らしいので、この2機種でチェックした場合に関しては今回の話はまた違ってくる可能性はあるのかも知れません。
と言うわけで前置きが長くなってしまいましたけど早速オススメしない理由を。
MC-11 × EF70-300mm F4-5.6 IS II USMをオススメしない理由
動画撮影時のAF不可
多分もうこの時点で買う気が失せる人が少なくないと思われますが、残念ながら動画モードに変更するとAFがピクリとも動作しませんでした。
シャッターを半押ししてみると、ピントを合わせにいくような動作はするものの、すぐにボケボケの状態で画面が止まってしまってAFが合いません。
そんなわけで、MC-11にEF70-300mm F4-5.6 IS II USMを装着した場合は、動画撮影時のAFが全く動作しないため、動画撮影はMFオンリーとなってしまう形。
せっかく動画撮影時のAFに優れるソニーのカメラを使うのに、動画撮影時はAFが使えないとか残念すぎますから、個人的には既にこの段階でソニーユーザーに対してMC-11でEF70-300mm F4-5.6 IS II USMを運用することをオススメしません。
瞳AFが使えない
顔認識はネイティブレンズ並みに顔を認識してほぼ正常動作するものの、瞳AFを使おうとすると
「このレンズでは無効です」とのエラーメッセージが出て使うことが出来ませんでした。
瞳AFもソニーカメラの代名詞と言っていいくらいの重要な機能・性能なので、ポートレート撮影等の人物撮影の用途も検討していて、瞳AFの使用を考えていらっしゃる方には、この組み合わせはオススメできません。
ましてや今後のファームウェアのアップデートで動物に対しても瞳AFが使えるようになるとか言ってるわけですし、もし野鳥なんかの撮影で鳥の瞳AFなんかできちゃうようなら(今回は犬猫のみ)望遠レンズで鳥撮ってる人たちにとっては欠かせない機能になり得るかも知れないわけで尚更。
やっぱりAFが微妙
ネイティブレンズと比較してしまえば、やっぱり多少のAFの迷いや遅さは感じますが、AFは個人的に予想していたよりも遥かに実用的で使えるレベルに感じています。
ファーカスエリアをマルチ(カメラが自動ピント合わせ)にしてもちゃんと被写体を検出して捉えてくれますし、マルチ × AF-C(コンティニュアスAF)で適当に飛んでる鳥や飛行機を撮影してもちゃんと追従してピントを合わせてくれたりもします。
α6500はバッファーが大容量だから、戦闘機が通り過ぎるまでマルチ × AF-Cで適当に連写してるだけで、かなりの確率でバチピンの写真が撮影できました。
3時間現場にいて戦闘機が飛んできたのはたった2回だけで、75から117までがその2回目に飛んできた時に連写して撮影した写真(一部色が異なる写真があるのはそれのみ現像しているから)なのですが、結局ピントが外れていて即捨てたのは5枚だけかな?
ちなみに上記した通りで私は普段連写とか全くしない「動体撮影初心者」で、戦闘機も今回初めて撮影しに行きましたが、このレンズとMC-11、α6500との組み合わせで難なく撮影することができています。
と、スチル撮影時のAFはかなり優秀ではあるのですが、症状が起こる回数自体は多くはないものの、コントラストがハッキリしている被写体を撮影しているにも関わらず、突然大きく外して合わなくなってしまうような理解不能(MC-11にソニーボディだからだけど)な症状が出てしまうことが稀に起こります。
シャッター半押し状態でピントを合わせようとすると、何の前触れもなくいきなりファインダーがボケボケで何も見えないレベルで大きく外し、その後「ガッ・ガッ・ガッ」とゆっくり被写体にピントを合わせようとして、結局合わせられずシャッターが切れないみたいな。
テレ端でこんなコントラストがハッキリした遠景の被写体を中央1点で狙い、ちゃんと合焦の合図が出てからシャッターを切ってるにも関わらず、こんな感じで被写体がボケボケ(この絵自体はくっきり描かれています)で写ったりしちゃうこともあります。
ちょっと上の写真は分かりづらかったんで、ちゃんと撮影できた写真と、ボケボケの2枚をトリミングした後に切り出して写真を並べて追加しておきます。
理由はよく分かりませんが、AFのチェック目的でこの滑り台に描かれたキャラクターを単写で5枚撮影したうちの3枚がボケボケでした。
また、ネイティブレンズでは問題なく合焦する程度のコントラストが低い被写体の場合でも、ファーカスポイント1点で合わせようとすると、ポイントの大小(ソニーは3つから選択可)によって合焦したりしにくかったりなんてこともあったりと、やはり信頼性の面で劣ります。
今回撮影しに行ってみた戦闘機の時は書いた通りで問題ありませんでしたけど、3時間現場にいて2回しか飛んで来ないような失敗ができないシビアな撮影になるとは思いもしなかった(もっと頻繁に飛んでくると思っていた)ので、後から考えたらやっぱ高くても
こっちなのかな?と素直に感じてしまった次第。
何度もやり直しが可能な撮影ならともかく、望遠レンズは失敗できない運動会とかでも使いたくて購入される方も少なくないと思いますから、やはり倍以上の値段でも純正買った方が良いのかなと。
もっともシビアな撮影をされる人は、そもそもMC-11とキヤノンレンズの組み合わせでの運用とか最初から考えないでしょうけども。
以上が個人的にオススメできない理由3つでした。
その他の不満点
大きく3つの理由を挙げましたが、一般的なユーザーが他に不満が出るとするなら、
- フォーカスエリアは「ゾーン、拡張フレキシブルスポット、ロックオンAF」の3つが使えない
- 非常に便利なAF-A(AF制御自動切り替え)が選択不可
- DMF(シャッターボタン半押し状態でフォーカスリングを回すとピントを拡大表示してピントを追い込める機能)が使えない
- MC-11を間に挟んだ際の剛性感
- カメラが故障しても保証対象外
ここら辺になるかと。
ただし、あくまでもMC-11にキヤノンのレンズを装着して運用しているわけですからある程度の機能や性能の制約があって当たり前の話で、最初から純正同様に使いたいなら「純正買えよ!」って話になります。
まぁ一応ソニーのレンズなら普通に使える機能・性能なので、MC-11にMC-11にEF70-300mm F4-5.6 IS II USM(って言うかキヤノンのレンズ全般かも)だとこれらの機能が使えないと言うことで記載しておきました。
ちなみにDMFは使えませんが、このレンズはフルタイムマニュアルだから、拡大表示ができないだけでシャッター半押し状態を維持したままフォーカスリングを回せばピントの追い込みは可能です。
剛性感に関しては、望遠レンズとしては小型軽量な方のこのレンズではあるものの、MC-11をかませてソニーのカメラに装着した感覚と、60Dに直接装着して持った感じとを比較してしまうと、やはりちょっと心許ない印象はどうしても拭えません。
ソニーEのマウント径が小さい影響で、もともと大型レンズの装着感がマウント径が大きいカメラと比較して軟弱な印象を持ってしまうこと自体も関係しているからってのもありますし、私のMC-11が個体差なのかレンズ側のみ若干装着感が緩くて、レンズが左右にガタつくからってのもあります。
まぁここら辺の話も人によってはMC-11で望遠レンズを使いたくないって理由になるのかもですね。
故障に関しては、MC-11でシグマのレンズを使って万一カメラが壊れた場合はシグマが補償してくれる?可能性はあるのかも知れませんが、常識的に考えてシグマ製以外のレンズを装着して万一カメラが壊れた場合はシグマもソニーも一切補償してくれないはずですし、仮にソニーストアで長期保証をつけている場合でも適用外になってしまうでしょうから、長期保証をつけている人はやめておいた方が無難かも知れません。
α6500とα7R IIIとでの使用感の違い
α6500とα7R IIIにそれぞれMC-11とEF70-300mm F4-5.6 IS II USMとを装着しての運用比較ではぶっちゃけ特に大きな違いは感じませんでした。
α7R IIIに装着した時の方が若干AFが速いのかな?ってレベル。
α9はもちろん、最新のα6400やα7 IIIの方がα7R IIIやα6500よりもAF性能が高いので、これらを使った場合の印象はまた違ったものになるかとは思いますが、α6500とα7R IIIとの比較ではそんな感じでした。
余談ですけど、私の場合はα6500もα7R IIIも発売日にソニーストアで長期保証をつけて購入しているため、上記した通りで万一の故障のことも考えて、35万円も出したα7R IIIの方ではあまりMC-11自体を装着したくないってのがあってあまり試しませんでした。
α7R IIIの方は5年ベーシック(メーカー保証書内の故障のみ無料)をつけているので尚更。
MC-11での運用時はやっぱり書いた通りで稀にAFが変な動作することがありますし、それがカメラに何かしらの悪影響を与えてしまう可能性も無きにしも非ずでしょうし。
α7SではAFは使い物にならず
私はα7Sも所有しているので、このカメラでもチェックしてみたところ、AFはほぼまともに動作することはありませんでした。
フォーカスエリアをゾーンに設定しようが中央1点にしようが、稀に合焦することはあってもほぼまともに使えるレベルではありません。
ただし、α7Sは古い機種ですし、現行のソニーのカメラとは異なり「コントラストAFのみ」のAFシステムですから仕方がないんでしょう。
最初から全く期待しておらず動作チェックもしていませんでしたが、行ってみたので追記しておきました。
まとめ
予想した以上に使い物にはなるので、特にシビアな動体撮影で使うわけでもなく、動画も撮影しないって方にならオススメすることはできます。
ただ、やっぱりケチらず純正買うのが一番でしょうね。
それに私はMC-11を既に所有していましたけど、MC-11所有していない人はこのアダプターの金額もプラスされるわけで、わざわざソニーのカメラで運用するためにMC-11とEF70-300mm F4-5.6 IS II USMの両方を購入する理由はキヤノンと併用したいって人以外は考え難いかも。
あとはシグマの100-400mmとか使ってみてどうなのか?でしょうが、とりあえず私はこのレンズで今のところは満足なので、もし機会があればってことで。
シグマのレンズの場合は動画撮影時のAFも一応動くって話みたいですけども…。
いずれにしても私個人としましてはタイトル通りで、ソニーのカメラにMC-11を装着してEF70-300mm F4-5.6 IS II USMを運用することはオススメしません。
なお、私が運営している別ブログにて、作例を沢山載せてこのレンズの詳細なレビューを行なっていますのでご興味ある方はどうぞ。