ニコンの高画素機「Z7」と標準ズームレンズ「NIKKOR Z 24-70mm f/4 S」の組み合わせを借りたので、以前から試してみたかった私物のソニー「α7RⅢ」との画質比較を行ってみました。
とにかくニコンのZマウントの描写性能は凄い!というのが世間一般の評判(評価)ですけど、私自身がZ5とZ50を借りて使ってみた限りでは共に標準ズームレンズのみを使用したせいもあるのか、良好であることは間違いないものの、他社比較で圧倒的な描写性能は実感出来ませんでしたので、今回はZマウント描写性能最強の高画素機のZ7で試してみることに。
ちなみにZ7は初代ですが、Z7 Ⅱとセンサー自体は一緒で画質自体はほぼ変わらない(チューニングは異なるかも)ので、結果に関しては「α7RⅢ」と「Z7 Ⅱ」で置き換えてもOKなのかも。
個人的にもガチで比較したらニコンの描写性能のほうが優れているだろうなとは考えていますが、果たしてどうだったのか。
目次
Z7 vs α7RⅢそれぞれの撮影条件
撮影結果の前に、撮影条件について記述しておきます。
使用カメラ | 使用レンズ | |
---|---|---|
ニコン | Z7(初代) | NIKKOR Z 24-70mm f/4 S |
ソニー | α7RⅢ | SEL24105G |
使用したカメラとレンズはそれぞれ上記の通りですが、ソニーのほうは1枚だけ
「単焦点並」と評価が高いシグマの24-70mmも使用しています。
写真は両機種共に非圧縮RAWで撮影し、
それぞれの写真をLightroomで読み込んで主にピント面を中心に等倍表示で並べたものをキャプチャーしてFlickrにアップしたので、画像クリックで拡大します。
私が使用している無料版Flickrだとサイズ制限(横2048px)があるため、実際の等倍写真は両機共に更に大きく、精細な写真ですけども。
JPEGだとニコンは「アクティブD-ライティング」、ソニーは「Dレンジオプティマイザー 」とかメーカー固有の様々な撮影補助機能を全てオフにすることが面倒だし、カメラが作り出しちゃうJPEGデータよりも生のデータの方が比較にふさわしいと考えました。
ただ、Lightroomで読み込むとAdobeの色味がデフォルトであてられるのと、ソニーはLightroomで周辺光量落ち等のプロファイル補正が入ること、逆にニコンは周辺光量の補正等をRAWでもカメラ側で行ってしまうため、今回は周辺の画質に関しては無視しています。
絞りは注釈なしはF8固定で、手持ちだったり、三脚固定だったりはその都度写真のところで注釈いれてます。
レンズ保護フィルターはレンタルのZのレンズにはPRO1Dがついていたため、私物のZXに変更して両レンズ共にZXで合わせてあります。
Z7 vs α7RⅢの撮影結果比較
以降、全て左がニコンの「Z7」で、右がソニーの「α7RⅢ」の写真です。
焦点距離は35mmで、三脚に設置してタイマー撮影、ピントは右真ん中の葉っぱに。
あ、これ最初に言っておきたいんですが、ニコン機(ニコンのミラーレスのみ?)ってJ5もそうだったんだけど、電源落としたり、スリープ状態になると、タイマー撮影がリセットされて単写に戻るんですよねー。
何でこんな仕様なのか意味が分からないんだけど?いちいちタイマー設定し直すのほんと面倒くさいし。
で、写真ですが、あまり変わらないのかなとは。
色味に関してはRAWなんで特に気になりませんが、一応触れておくと、ニコンは黄色味、被写体によっては青みががった色かぶりしているような色味で、ソニーは常にマゼンタかぶりっぽい色味になりました。
どちらも当然ライティングは一緒だし、ホワイトバランスはオートで一緒ですけども。
ニコンのほうは初代Zだからなのかな?ファインダーや液晶もカラー変更は可能なものの、デフォルトだと黄色っぽい色味(レンタル品で劣化している可能性も)でした。
Z50やZ5のRAWはファインダーや液晶の色味は非常に綺麗でしたけども。
焦点距離70mmで手持ち、ピントは一番大きなビルに合わせています。
こちらは上の写真を200%に拡大した写真。
この写真はZ7のほうが精細に描写しているような気がします。
ビルもそうだし、看板の文字もZ7のほうがハッキリ写っていました。
焦点距離52mm、三脚据え置きでタイマー撮影、この写真はF11まで絞っています。
あ、そういや全ての写真でISO感度はそれぞれ最低ISO感度に設定しています。
ソニーはISO100ですが、ニコンはISO64なのでISO64で撮影しました。
Z7はISO64まで常用できたり、フォーカスポイントを極小に設定できる(ピンポイントAF)点は非常に羨ましいなと。
α7RⅢはフォーカスポイントがS、M、Lの3種類の大きさのみしか選べずアバウトなので。
描写に関しては大差ないですかね?若干Z7のほうがラベルの文字とかコーヒー豆とかシャープに写っているかな?
不思議なことにこの写真上ではニコンのほうが暖色系の色味に写っています。
差し替えミスではありませんので念のため。
焦点距離70mmで、三脚据え置きでタイマー撮影、この写真だけソニーのほうはシグマの24-70mmを使用してみました。
それとこの写真は両機共に「瞳AF」を利用してみています。
三脚に設置していたことや、被写体が全く動かないこともあるからか「瞳AF」の精度はどちらも全く問題ありませんでした。
発売当初のZ7はAF性能で結構酷評されていた印象でしたが、ファームウェアのバージョン3以降でかなりAF性能が上がったそうで、私が使用したZ7もシビアな動体撮影でもしない限りは何ら不満を感じないレベルでした。
このバットマンのハーレークインのフィギュアはポリストーンといって石膏のような質感なので、化粧した肌のザラつきまで再現されているんですけど、その肌の質感はZ7のほうが精細に描写している気がします。
ライトは目にハイライトが入るように右からこのコンパクトライトを直接当ててますが、Z7のほうがコントラストが高い写真になっているので、そのせいで肌の凹凸が分かりやすく写ったからかも知れませんが。
瞳の虹彩は微妙にα7RⅢのほうが良く写っている気もしますが、いずれにしてもシグマのartの24-70mmと比較しても同等以上の描写力をZ7と標準ズームレンズの24-70mmの組み合わせで有しているようです。
焦点距離70mmで三脚設置、タイマー撮影、これも瞳AF使用、ソニーのレンズはまたSEL24105gです。
これは先程のハーレークインのフィギュアとペアのフィギュアでPrime1Studioの製品。
200%拡大がこちら。ジョーカーなんで顔が気持ち悪かったら申し訳ありません。
こっちもコントラストがZ7のほうが強いからなのか、Z7のほうが肌の質感とかが良く表現されているような印象は持ちました。
焦点距離は35mmで、三脚&タイマー撮影です。
ピントはONKYOのプレートに合わせましたが、α7RⅢのほうはモアレ?発生しているのか、偽色が見て取れると思います。
Zマウントはカメラは「Z50」と「Z5」、レンズは標準ズームの4本使っていますけど、いずれもゴーストやフレア(フレアは結構出た)の抑制に優れているのが分かりましたが、このようなモアレの発生も抑えるコーティングとかされているのかな?
あまり詳しくないから良く分かりませんけど、ソニーの方はしっかり出ちゃっているので、この点ニコンのほうが優秀なのは間違いなさげ。
焦点距離50mm、三脚、タイマー撮影。
これめっちゃ可愛いんで、野鳥撮影している人とかにおすすめ。
室内での鳥瞳AFテスト撮影なんかにも使えます。
写りはあまり変わらないかな?
ピクセルシフトマルチ撮影が凄かった!
先程の写真ですが、全く同じ条件で、α7RⅢのほうだけ「ピクセルシフトマルチ撮影」を行っています(っていうかZ7にはない機能)。
すると、プレートのモアレが消えて、プレートのヘアラインとかクッキリと写りました。
これも先程の写真でソニーのほうだけピクセルシフトを使用しています。
やはりピクセルシフトを使うとα7RⅢのほうが描写力がブーストして更に精細に描写するみたい。
イメージセンサーを正確に1画素分ずつずらして計4枚の画像を撮影。専用のソフトウェアで、撮影した4枚の画像が持つ約1億6960万画素分の膨大な情報から、解像感に優れた1枚の画像を生成することができます。【注意】生成される画像サイズは約4240万画素。
https://www.sony.jp/ichigan/products/ILCE-7RM3/feature_1.html
ピクセルシフトの説明はこの通り。
個人的にはα7RⅢの画質で十分満足していたことや、三脚使用じゃないと使えないこともあり、今まで数えるほどしか試していませんでしたが、今更ながら室内での撮影に関しては非常に有効なことが判明。
とはいえ、やっぱり屋外だと風の影響を受けるから、微妙に動いてしまう雲や葉っぱがモザイク状になってしまったり、
ソニーのカメラ用ソフトウェア「Imaging Edge Desktop」をインストールして、このソフトから合成しないと作れないこともあるから、屋内の物撮りくらいしか使えずあまり実用的な機能とは言えませんが。
でもRAWと同じ非破壊のTIFFでも生成できて、Lightroomで読み込み&現像できる(今回は直接JEPG出力)から、今後はたまに使ってみようかなとは。
Z7 vs α7RⅢの画質比較感想
- 焦点距離や被写体に関わらず概ねZ7のほうが微妙に解像している印象
- α7RⅢにシグマの24-70mmを装着しても同等以上
- ピクセルシフトを使えばα7RⅢの写真のほうが良好に
という結果に。
今回数枚サンプルとしてFlickrにアップしてますが、実際にはもっと多くの被写体で比較撮影しています。
それらを私が贔屓目なしに撮影結果を見た限りでは、どの写真もZ7のほうが微妙に被写体のディテールが良く写っていたと思います。
理由としては様々あるのでしょうが、ひとつはZ7のほうが有効画素数が多い(大きい)という点があるのかなと。
カメラ | 有効画素数 |
---|---|
ニコン Z7 | 4575万画素 |
ソニー α7RⅢ | 約4240万画素 |
と335万画素Z7のほうが多いので。
ちなみにZ7のほうだけ「約」の表記が抜けているわけではなく、Z7の公式サイト上にも表記がないからで、α7RⅢのほうは逆に「約」と表記されています。
あとは単純にニコンのカメラやレンズのほうが描写力が高いのかも知れません。
これに関しては、ニコンがウリにしている大口径マウント&ショートフランジバックの恩恵もあるのかも知れませんし、ニコンの技術力の高さもあるのかも知れません。
また手ブレ補正に関しては、Z7のほうが明らかに手ブレ補正効果が上なので、特に手持ち撮影での撮影比較でシャッタースピードが遅めで撮影した写真の場合はニコンの写真のほうが良く解像する可能性はあると思います。
実際使えば分かりますけど、高画素機で撮影した写真の場合は本当にブレにシビアになりますので。
ただ、使用した標準ズームレンズはソニーのほうが105mmまでと焦点距離が長い分不利と言ったら不利なのは確かかも。
そりゃ70mmまでに抑えたほうが設計、製造しやすいのは当然でしょうから。
そんなわけで、世間一般で言われている通り「Zマウントのカメラやレンズの描写性能はピカイチ」と個人的にも判断しました。
まとめと感想
書いた通り、Z7のほうが若干撮影結果は良好だったと思いますが、ぶっちゃけ期待していたほどの大きな差は見られなかったいうのが偽らざる本音。
レンズ次第でひっくり返る程度の結果なので、マウントを変更してまで買い替えたくなるほどの違いは感じませんでした。
ピクセルシフトの結果くらいZ7のほうが圧倒していたら、やっぱ「大口径マウントのZすげー!Zにマウント変更するか!」ってなったかも知れませんが。
っていうか、あらためてα7RⅢ優秀だなと再認識。やっぱ良いカメラだわ。
でも、Z7に更に良いレンズを装着して撮影してみたかったというのはあります。
特にこの105mmのマクロとか。個人的にマクロレンズが好きなので。
っていうか、Z9はこの描写性能を引き継いだままであの連射や動画性能ということで、本当にゲームチェンジャーになり得るカメラになりそうですね。
ちなみに、ユーザー側でダイレクトに感じられる大口径マウントのメリットは、やはりマウント部分の剛性感と手ブレ補正なのかも知れません。
マウント径が小さいと超望遠レンズとかつけるとマウント部分の剛性が心許なく感じるし、手ブレ補正は物理的に考えてマウント径が大きいほうがブレにくいのは間違いないんだと思います。
マウント径が小さいほうが大きいマウント径よりも同じブレ量でもブレ幅が大きくなりますから。
大口径Zマウントの周辺光量落ち
ちなみに「大口径マウントだから周辺まで・・・」とか世間じゃ言われるんですけど、特定の被写体と光源(夜間、室内、LED蛍光灯下)だと何故かこんな酷い周辺光量落ちの写真が撮れてしまうことがありました。
この写真は設定間違えて露出補正を-1にしたまま撮影しちゃったから、写真全体的に尚更暗く写っていますけど、それでも周辺の光量落ちがびっくりするほど酷く写っています。
もちろん24mm、絞り開放だから周辺光量落ちしやすい設定ではあるのですが、それを差し引いても酷いなと。
写真はRAWで撮影したものをLightroomで読み込んだだけで、現像前の何もいじっていない状態です。
ただ、ニコンZマウントのカメラの場合は、RAWでも周辺の補正はカメラ側で行うから自動補正が入っているはずですけど。
こちらはZ5に「NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3」の組み合わせで、こちらは露出補正の値は間違えていません。
こちらはJPEGで撮影していて、ファイル名のアンダーバーはカメラの色空間「AdobeRGB」で撮影しているからで、ヴィネットコントロールは標準。
どちらもホワイトバランスはオートで、測光はマルチパターン。
ちなみに小口径マウントのソニーのα7RⅢで撮影すると左の通り。
ソニーのほうもRAWで撮影しているので、こちらはカメラ内ではなく、Lightroomのプロファイル補正が入っています。
今回周辺の画質の比較を避けたのはこういう事例があって、何か設定がおかしいのか、レンタル品だからどこかカメラやレンズがおかしいのかが不明だったからもありました。
もちろんZ7のほうだけ私が細工していることはありませんし、普通に風景を撮影していてこのように周辺光量落ちが酷くなるってこともありませんでした。
適当な写真で失礼しますが、これもLightroomで読み込んだだけの未補正のRAWですが、テレ端の70mm側(絞り開放)でもケラれたレベルの周辺光量落ちが見られることがありました。
大口径マウントで周辺まで光が均一に入るとかニコンが言っていて、尚且カメラ側で自動補正済みでコレっていうのもさすがにおかしいような気もしますが、私にはよく分からないのでありのまま報告しておきますけど。
再度レンタルして試してみた結果
APS-CのZ50ですが、2回目借りて試してみたところ、特に大きな周辺光量落ちは見られず。
レンズは「NIKKOR Z DX 50-250mm f/4.5-6.3 VR」で50mm側(35mm換算で75mm)で、真っ白な被写体を撮影した際に補正が入って四隅に若干光量落ちが見られる形で特別おかしな症状は無し。
ただ、今回借りたZ50は動画撮影時のAFが全く効かないというちょっとおかしな症状の個体が届いていました。
ニコンのカメラは動画撮影時はAF-FにしないとAFが動作しないはずだと思いますが、もちろんここら辺もチェック済みですけど、動画撮影時のみAFが全く動作しませんでした。
設定を全てリセットしたら問題なく動作したため、おかしかった周辺光量落ちも何かカメラがおかしくなっていただけなのかも知れません。
やはりレンタル品の影響があったのかもです。
Z7カメラの印象
発売当初はかなり酷評されていた印象があった初代のZ7でしたが、ファームウェアのアップデートを重ねたこともあるからか、実際に使ってみたら非常に良いカメラでした。
私が買って使っていたニコン1のJ5も凄く良いカメラでしたけど、やっぱニコンのカメラにはカメラファンを惹きつける魅力が沢山あるんでしょう。
中古でも良いなら初代Z7は非常にお手頃価格ですし、描写性能は間違いなく、ピント精度もバッチリでしたから、動体撮影や動画をあまり撮らない人に是非使ってもらいたいカメラに感じました。
レンズもZ7との組み合わせだとシグマの24-70mmと変わらないかそれ以上の描写力を見せつけてくれるので、沈胴式さえ我慢できれば良いレンズだと思います。
これも中古で安価に買うか、キットレンズのバラしの未使用品もフリマアプリ等で安く売られていますから。
私は沈胴式はイライラして無理なので、もしニコンのZを買ったとしても、沈胴式とプラマウントのレンズは100%買いませんけど。
そんなわけで、私が行ったZ7とα7RⅢの描写性能比較は以上でした。
なお、別な人がやれば違う結果になるかも知れませんし、Z7のほうは不特定多数が使用するレンタル品、α7RⅢは発売日に購入した4年経った私物ですから、両機共に撮影結果に何かしらの悪影響が出ていた可能性は比定できません。
あくまでもネタとして、ちょっとした参考程度に考えてもらえれば幸いです。